肉離れ:JISS分類でわかる重症度と治療の選択肢|世田谷区の整形外科


導入:その「ブチッ」という感覚、放っていませんか?

全力疾走や急なストップ&ターンの瞬間、太ももやふくらはぎに「ブチッ」という衝撃を感じた経験はないでしょうか。いわゆる肉離れはスポーツ愛好家から日常生活のちょっとした動作まで、誰にでも起こり得る筋肉の損傷です。ところが応急処置だけで済ませてしまい、「やっと治ったと思ったらまた同じ場所が痛む…」と再発を繰り返す方が後を絶ちません。
この記事では JISS分類 を用いた重症度判定、MRI検査 の役割、PRP体外衝撃波治療(ESWT) など近年注目の再生医療的アプローチまで、最新エビデンスを交えてわかりやすく解説します。


背景・原因:筋肉を襲う“急ブレーキ”と“遠心性負荷”

肉離れは急激な筋伸長ストレスが筋線維に加わり、部分断裂や広範な出血を引き起こす状態です。特にハムストリングスや下腿三頭筋では「短時間で加速→減速」を繰り返す競技で頻発します。

  • 遠心性収縮:筋肉が伸ばされながら力を発揮する瞬間に発生しやすい
  • 柔軟性低下や筋疲労:ウォームアップ不足・水分不足・睡眠不足などが誘因
  • 過去の肉離れ歴:瘢痕組織が伸張性を失い再断裂の温床になる

JISS分類:タイプ(損傷部位) × グレード(損傷度) の2軸で重症度をみる

JISS分類は、国立スポーツ科学センター(JISS)で提唱された肉離れのMRI分類です。「どこが切れたか」(タイプ)だけでなく「どの程度切れたか」(グレード) まで同時に判定するのが特徴で、より細かく重症度と回復の見通しを評価できます。

タイプ(損傷部位)代表的な部位グレード1(わずかな損傷)グレード2(部分断裂)グレード3(完全断裂)
Ⅰ型筋線維部(筋腹・筋間・筋膜)競技復帰目安:平均1.6週(Ⅰ型全体)
Ⅱ型腱膜部(筋腱移行部を含む)復帰目安:平均2.0週平均6.4週平均9.8週
Ⅲ型筋腱付着部(坐骨・腓骨・脛骨などの付着部)多くは保存療法:おおむね1〜2か月保存または手術:4か月前後完全断裂・裂離では早期手術を検討:5〜6か月程度

Ⅰ型・Ⅱ型の数値は、JISS分類の基となった大腿二頭筋肉ばなれ203例(急性期にMRIを撮像した症例)の平均復帰時期です。Ⅲ型は症例数が少なく損傷度別のデータが限られるため、半膜様筋113例の報告などをもとにしたおおよその目安であり、実際の期間は損傷部位や程度、競技によって大きく異なります。

これで何が変わる?

  1. 再発予防の精度が上がる
    同じⅡ型でもグレードが上がるほど修復時間は倍以上。MRIで腱膜の連続性が grade 1 → 3 へ進むほど、スプリント開始の可否 を厳密に再チェックする必要があります。
  2. 治療選択が明確になる
    Ⅲ型 grade 3 の坐骨付着部完全断裂(裂離)では、できるだけ早期(おおむね受傷4週以内)の手術が検討されます。保存療法では瘢痕短縮を残しパフォーマンス低下を招くことがあります。
  3. リハビリ計画を個別化できる
    同じ腱膜損傷(Ⅱ型)でも grade 1 と 3 では治癒に要する時間が大きく異なり、理学所見だけで復帰を判断すると再受傷のリスクが高まると考えられるため、当院では grade 2 以上なら再撮MRIで腱膜修復を確認してからスプリント許可を出すことをおすすめしています。

診断・検査:エコーとMRIをどう使い分ける?

  1. 初期外来(受傷直後)
    • 視診・触診:腫脹、陥凹、皮下出血の分布を確認
    • 超音波(エコー):その場で血腫量や筋腱連続性を把握し、早期リハビリ計画に役立てる
  2. 48~72時間以内にMRI
    • T2スター/STIR で水分シグナルを検出し損傷範囲を正確に描出
    • JISS分類による重症度判定と予後予測
    • 深層筋や複数筋の同時損傷など見逃しを防ぐ (rinspo.jp)

治療:RICEから再生医療まで“段階的に”

基本は保存療法+段階的リハビリ

受傷直後は RICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation) を24~48時間を目安に行い、疼痛と腫脹を抑えます。近年は、必要以上の安静はかえって回復を遅らせるという考えから、痛みの許す範囲で早期から保護しながら動かす POLICEPEACE & LOVE という考え方も広まっています。ただし、どの程度動かしてよいかは損傷の型・程度によって大きく異なるため、自己判断せず医師の指示に従ってください。痛みが落ち着いたら ストレッチ→等尺性→等張性→プライオメトリクス の順で負荷を上げていきます。

再発・長期離脱を防ぐ先進治療オプション

  • PRP療法
    自己血液から濃縮した血小板を損傷部位へ注入し、成長因子による組織修復を促す治療です。復帰期間の短縮を報告した研究がある一方、無作為化比較試験では有意な短縮を認めなかったとの報告もあり、効果の評価は定まっていません。肉離れに対しては保険適用外(自費診療)となるため、適応や費用を含めてご相談ください。(seikei-saisei.jp)
  • 体外衝撃波治療(ESWT)
    難治性の症例や再発例に対して、疼痛の軽減と組織修復の促進を期待して用いられることがあります。外来で施行でき重い合併症は少ないとされますが、肉離れに対する有効性を示すエビデンスは限られており、この場合は保険適用外(自費診療)です。(tokai-sports.jp)

当院での対応
豪徳寺整形外科クリニックでは、JISS分類に基づくMRI読影とリハビリ主導型プログラムを基本とし、PRP・ESWTを含めた再生医療的選択肢も個別に提案しています。


安静期間と再発リスク:焦りは禁物

軽症のⅠ型でも1〜2週間程度は競技を中止することが多く、Ⅱ型(腱膜損傷)の復帰は平均でおよそ5週間ですが、損傷度によって2週間から10週間近くまで幅があります。Ⅲ型(付着部損傷)はさらに長く、3か月以上、重い例では半年近くを要することもあります。
不完全治癒や柔軟性不足で復帰すると再発率が高まり、同部位再断裂が“癖”になることもしばしば。JISS分類とMRIフォローで「治り切ったか」を客観的に確認し、再発予防のゴール設定 を行うことが近道です。


まとめ・受診案内

  1. JISS分類×MRI で重症度と復帰期間を予測できる
  2. 保存療法が基本で、PRP・ESWT は自費診療の追加的な選択肢
  3. 安静期間は重症度で大きく異なり、焦ると再発リスク増
  4. 再発防止の鍵は 柔軟性回復と段階的負荷
  5. 気になる痛みや違和感があれば、受傷直後から適切な診断が重要です。
    競技復帰を急ぎたい方も、まずは当院でMRIチェックとリハビリ計画を立てましょう。お気軽にご相談ください。

要約(ポイント)

  • 肉離れは遠心性負荷で生じる筋線維損傷
  • JISS分類(Ⅰ~Ⅲ型)はMRIで判定し予後を推測
  • 復帰目安は軽症1〜2週、中等症は平均5週前後、重症は3か月以上と幅がある
  • PRPやESWTなど再生医療的治療が選択肢に
  • 不完全復帰は再発リスク大、柔軟性・筋力回復が必須
  • 当院では個別の競技復帰プランを提供

▶ 肉離れの要点を1ページで見る(原因・症状・治療をまとめた患者さん向けページです)


 

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