膝の痛みは年のせい?——変形性膝関節症の原因・予防・最新治療をわかりやすく解説|世田谷区の整形外科
「階段を下りるとき膝が痛い」「正座ができなくなった」「朝、歩き始めに膝がこわばる」——こうした症状に心当たりはありませんか。これらは変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)、略して「膝OA」と呼ばれる病気の代表的なサインです。
変形性膝関節症は、日本人の中高年に非常に多い疾患で、推定患者数は約2,500万人ともいわれています。「年だから仕方ない」と放置してしまう方も少なくありませんが、正しい知識を持って早めに対処すれば、痛みを和らげ、進行を遅らせることが十分に可能です。今回は、この身近な膝の病気について詳しくお話しします。
そもそも変形性膝関節症とは?
私たちの膝関節の骨の表面には、厚さ数ミリの「関節軟骨(かんせつなんこつ)」というクッションの役割を果たす組織があります。この軟骨がすり減ったり傷んだりすることで、骨同士がぶつかりやすくなり、痛みや炎症が生じるのが変形性膝関節症です。
進行すると、骨の端にトゲのような突起(骨棘:こつきょく)ができたり、膝の形がO脚に変形したりします。レントゲンでは関節の隙間(関節裂隙:かんせつれつげき)が狭くなっているのが特徴です。
どんな人がなりやすい?
変形性膝関節症にはいくつかのリスク因子があります。
加齢が最も大きな要因です。軟骨は年齢とともに弾力を失い、修復力も低下します。50代以降で発症する方が多く、年齢が上がるほど有病率も高くなります。
性別も関係します。日本整形外科学会のデータによると、男女比は1対4で、女性に圧倒的に多い疾患です。閉経後のホルモン変化や、もともとの筋力の違いなどが影響していると考えられています。
体重の影響も見逃せません。BMI(体格指数)が5増加すると、膝OAのリスクは約35%上昇するという報告があります。体重が重いと膝にかかる荷重が増えるだけでなく、脂肪組織から分泌される「アディポカイン」という物質が関節の炎症を促進することもわかってきました。つまり、体重の影響は単なる「重さ」だけではないのです。
このほか、過去の膝のケガ(靭帯損傷や半月板損傷、骨折など)や、遺伝的な要因も関与します。
症状の進み方——3つのステージ
変形性膝関節症の症状は、一般的に以下のように段階的に進行します。
初期では、動き始めに感じる軽い痛み(起動時痛)が特徴です。少し歩くと痛みが和らぐことが多く、「気のせいかな」と見過ごしがちです。
中期になると、階段の上り下り(特に下り)で痛みが強くなり、正座が困難になります。膝に水がたまる(関節水腫)こともあります。
末期では、安静にしていても痛みがあり、歩行が著しく制限されます。O脚変形が目立つようになり、日常生活に大きな支障をきたします。
大切なのは、初期〜中期の段階で適切な治療を始めることです。
治療法——保存療法から手術まで
変形性膝関節症の治療は、まず保存療法(手術をしない治療)から始めるのが原則です。
運動療法が治療の柱
最も重要なのは運動療法です。特に太ももの前面にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を鍛えることで、膝関節の安定性が高まり、痛みが軽減します。
自宅でできる簡単な方法として、椅子に座った状態で片脚をまっすぐ伸ばし、5〜10秒キープする運動があります。これを1日20〜30回、左右それぞれ行うだけでも効果が期待できます。水中歩行やストレッチも膝への負担が少なくおすすめです。
体重管理の効果
体重を適正に保つことも非常に重要です。研究では、約5kgの体重減少で慢性的な膝の痛みが改善することが報告されています。また、20%以上の減量に成功した膝OA患者では、5%未満の群と比べて明らかに痛みが改善したというデータもあります。
運動が難しい方でも、食事療法だけで有意な体重減少効果が得られることがわかっています。最近では肥満症に対するGLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)による薬物治療も選択肢に加わりつつあり、減量を通じた膝OA症状の改善が期待されています。
薬物療法・注射療法
痛みが強いときには、消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服や外用薬(湿布・塗り薬)を使います。関節内へのヒアルロン酸注射も広く行われており、関節の潤滑を改善し、痛みを和らげる効果があります。
近年注目されているのがPRP療法(多血小板血漿療法)です。患者さんご自身の血液から成長因子を多く含む成分を抽出し、膝関節に注射する治療法です。ヨーロッパのスポーツ医学会(ESSKA)のコンセンサスでは、膝OAに対するPRP療法はGrade A(最も高いレベル)のエビデンスがあるとされています。ただし、進行度がKellgren-Lawrence分類のgrade 1〜3(軽度〜中等度)の方が良い適応とされています。
装具療法
膝のサポーターや足底板(インソール)を使うことで、膝への負担を軽減することもできます。O脚の方では、外側楔状の足底板が痛みの緩和に役立つことがあります。
手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合は、手術を検討します。活動性の高い比較的若い方には高位脛骨骨切り術(HTO)——脛の骨の角度を調整してO脚を矯正する手術——が選択されることがあります。関節の変形が高度な場合には、**人工膝関節置換術(TKA)**が行われます。
日常生活でできる予防と対策
変形性膝関節症の予防や進行を遅らせるために、日常生活で心がけたいポイントをまとめます。
太ももの筋力を維持・強化することが何より大切です。毎日の大腿四頭筋訓練を習慣にしましょう。正座や和式トイレなど、膝を深く曲げる姿勢はできるだけ避けるのが望ましいです。適正体重を維持し、体重増加に注意しましょう。寒い時期には膝を冷やさないよう保温を心がけてください。痛みがあるときは無理をせず、早めに整形外科を受診しましょう。
まとめ
変形性膝関節症は、加齢や体重増加に伴って誰にでも起こりうる身近な病気です。しかし、「年のせい」とあきらめる必要はありません。運動療法と体重管理という2本柱を中心に、ヒアルロン酸注射やPRP療法といった選択肢も活用しながら、痛みをコントロールし、膝の機能を長く保つことが可能です。
気になる症状がある方は、早めに整形外科専門医にご相談ください。早期の対応が、将来の膝の健康を大きく左右します。
注意: この記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を代替するものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
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