外反母趾の原因・治療法を整形外科が解説|豪徳寺整形外科クリニック

外反母趾とは? — 親指が「くの字」に曲がる足の変形

外反母趾(がいはんぼし)は、足の親指が小指側に「くの字」に曲がり、親指の付け根の内側が出っ張ってくる変形です。医学的には hallux valgus(ハルクス・バルガス) と呼ばれ、前足部の変形疾患のなかで最も多い疾患のひとつです。

変形が進むと、出っ張った部分が靴に当たって痛む(バニオン)だけでなく、第2趾・第3趾にも影響が及び、足全体のバランスが崩れてしまいます。

ざっくり言うと:外反母趾は「見た目の問題」だけではありません。痛みや歩きにくさに加え、膝や腰にまで二次的な影響が出ることがあります。

外反母趾の重症度 — X線でどう評価する?

外反母趾の重症度は、体重をかけた状態(荷重位)のX線写真で測定する 2つの角度 で判定します。

重症度外反母趾角(HVA)第1-2中足骨間角(IMA)
正常15度未満9度未満
軽度15〜30度9〜13度
中等度30〜40度13〜20度
重度40度以上20度以上

角度だけで治療方針を決めるわけではありませんが、手術が必要かどうかの重要な目安になります。

外反母趾の原因 — 靴だけが悪いわけではない

「ハイヒールが原因でしょ?」と思われがちですが、実は 最大のリスク因子は遺伝 です。外反母趾の患者さんの約70%に家族歴があるとの報告があります(米国整形外科学会:AAOS)。

体質的な要因(内因性)

  • 遺伝的素因 — 家族に外反母趾の方がいると発症リスクが高い
  • 扁平足 — 内側の土踏まずが低いと、母趾に負荷が集中しやすい
  • 関節のゆるさ(関節弛緩性) — 第1中足骨の付け根が不安定になりやすい
  • 足の形状 — 第1中足骨が短い、中足骨頭が丸いなど
  • 性別 — 女性は男性の約15倍多い

外的な要因(外因性)

  • 先の細い靴・ハイヒール — 変形を「悪化」させる最大の外的因子(ただし直接的な原因というより、素因のある方の変形を進行させるもの)
  • 加齢に伴う筋力低下 — 足の筋肉が弱ると変形が進みやすい
  • 体重増加 — 前足部への荷重が増加する
ポイント:裸足で生活する民族にも外反母趾は認められます。靴だけが原因ではなく、もともとの足の構造に外的ストレスが加わって変形が進むと考えられています。

こんな症状があれば受診を — チェックリスト

  • 親指の付け根の内側が靴に当たって痛い
  • 親指が第2趾の下に潜り込んでいる
  • 足の裏(第2〜3趾の付け根あたり)にタコができた
  • 長時間歩くと足が疲れやすい・痛い
  • 以前は履けた靴が合わなくなってきた
  • 親指の曲がりが年々ひどくなっている気がする

1つでも当てはまる方は、変形が進行する前に整形外科への受診をおすすめします。

保存的治療 — まずは手術をしない治療から

外反母趾の治療では、まず保存的治療(手術をしない治療)を十分に行う ことが国際的なガイドラインでも推奨されています。保存的治療は変形そのものを治すものではありませんが、痛みの軽減と変形の進行を抑えることが目的です。

1. 靴の見直し(最も基本的な対策)

  • つま先の広い靴(ワイドトゥボックス)を選ぶ
  • ヒールは3cm以下が理想的
  • 足長だけでなく足囲(ウィズ)も合わせる
  • パンプスやハイヒールの使用頻度を減らす

2. インソール(足底挿板)

内側の土踏まずを支え、足全体の荷重バランスを整えるインソールは、特に 扁平足を合併している方に有効 です。当院では患者さんの足に合わせた オーダーメイドのインソール も作製しています。

3. 装具・パッド

  • バニオンパッド — 出っ張り部分への圧迫・摩擦を緩和するシリコン製パッド
  • トゥスペーサー — 親指と第2趾の間に挟み、軽度の矯正効果
  • 夜間用スプリント — 就寝時に装着して母趾を矯正する装具。痛みの緩和に一定の効果あり

4. リハビリテーション(運動療法)

足の筋力を維持・回復させるリハビリは、変形の進行予防にとても大切です。

  • タオルギャザー — 床に広げたタオルを足の指でたぐり寄せる運動
  • 足趾グーパー運動 — 足の指を大きく開いたり閉じたりする運動(日本整形外科学会も推奨)
  • 母趾外転筋の筋力強化 — 親指を外側に開く力を鍛える
  • アキレス腱のストレッチ — ふくらはぎが硬いと前足部に負担が集中する

5. テーピング

母趾を内側方向へ誘導するテーピングは、日常生活での痛みの軽減に役立ちます。ただし長期的な矯正効果は限定的で、皮膚トラブルへの配慮も必要です。

6. 薬物療法・物理療法

  • 消炎鎮痛薬(NSAIDs) — バニオン部の炎症・痛みに対して
  • アイシング — 急性の腫れや痛みに対して

手術治療 — 保存的治療で改善しない場合

十分な保存的治療を行っても痛みや機能障害が続く場合に、手術を検討します。大切なのは、X線上の角度だけで手術を決めるのではなく、患者さんの症状(痛み・歩きにくさ・靴が履けない等)が判断基準 という点です。

代表的な術式

術式変形の程度特徴
Chevron法(シェブロン法)軽度〜中等度中足骨頭部でV字型に骨切り。最も広く行われる術式のひとつ
Scarf法(スカーフ法)中等度骨幹部でZ字型に骨切り。矯正量の調整がしやすい
Lapidus法(ラピダス法)重度第1中足骨の付け根の関節を固定。不安定性を伴う重度変形に有効
MICA(経皮的骨切り術)軽度〜中等度数mmの小切開で行う最小侵襲手術。術後の痛みが少なく回復が早い

当院では必要に応じて提携病院へのご紹介も行っています。術式の選択は、変形の程度・関節の安定性・生活スタイルなどを総合的に判断して決定します。

術後の経過

  • 骨がつくまでの期間:約6〜7週間
  • 社会復帰の目安:術後6〜12週間
  • 最終的な機能改善:術後約1年かけて進行

外反母趾を予防するために

遺伝的な要因が大きいため完全に予防することは難しいですが、以下の対策で発症リスクの軽減や進行の抑制が期待できます。

  1. つま先にゆとりのある靴を選ぶ — ヒールは3cm以下が望ましい
  2. 足の指の運動を習慣にする — グーパー運動やタオルギャザーを毎日行う
  3. 室内では裸足で過ごす — 足の指を自然に使う時間を確保する
  4. 適正体重を維持する — 前足部への過度な荷重を防ぐ
  5. 扁平足があれば早めに対応 — インソールなどでアーチを支持する
  6. 家族歴がある方は定期的にチェック — 変形が軽いうちに対策を始めることが重要

よくある質問(FAQ)

Q. 外反母趾は自然に治りますか?

残念ながら、一度できた骨の変形が自然に戻ることはありません。ただし、保存的治療で痛みを軽減し、進行を遅らせることは可能です。早めの対策が大切です。

Q. 市販の外反母趾グッズは効果がありますか?

シリコン製のトゥスペーサーやバニオンパッドは、痛みの緩和に一定の効果があります。ただし、変形そのものを治す効果は限定的です。症状が続く場合は整形外科での適切な評価をおすすめします。

Q. 外反母趾の手術は痛いですか?

術中は麻酔下で行うため痛みはありません。術後数日間は痛みがありますが、鎮痛薬で管理できます。近年普及している最小侵襲手術(MICA)は、従来の手術より術後の痛みが少ないことが報告されています。

Q. どのくらいの変形から手術が必要ですか?

角度の大きさだけでは判断しません。保存的治療を十分に行っても痛みが取れない場合、靴が履けない場合、歩行に支障がある場合に手術を検討します。お気軽にご相談ください。

当院での外反母趾治療

豪徳寺整形外科クリニックでは、外反母趾でお悩みの患者さんに対し、問診・触診・X線検査を行い、変形の程度と症状に応じた治療プランをご提案しています。

  • 荷重位X線による正確な角度計測
  • 足の状態に合わせたインソール処方
  • 理学療法士によるリハビリテーション指導
  • 手術が必要な場合は提携病院への紹介

「親指の付け根が痛い」「靴に当たって痛い」「親指が曲がってきた気がする」——そんな症状がございましたら、変形が進む前にお早めにご相談ください。


 

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