大人の股関節痛、「発育性股関節形成不全」と言われたら。なぜ今痛みが出るのか? 

大人の股関節痛、「発育性股関節形成不全」と言われたら。なぜ今痛みが出るのか?

股関節に痛みを感じて整形外科を受診した際、医師から「発育性股関節形成不全(はいくせい・こかんせつけいせいふぜん)」という診断名を聞いて、驚かれる方が少なくありません。

「赤ちゃんの病気ではないのか?」「なぜ大人になってから言われるのか?」といった疑問を持たれるのは当然のことです。

実は、日本人の股関節の痛みの原因として非常に多く、特に女性に多く見られる疾患です。今回は、この病気の正体と、当院での治療方針について分かりやすく解説します。


1. なぜ「大人」なのに「発育性」と呼ぶのか

かつては「先天性股関節脱臼」と呼ばれていましたが、現在は、生まれつきの脱臼だけでなく、成長の過程で股関節の「受け皿」が十分に育たなかったケースも含めて、幅広く「発育性股関節形成不全(DDH)」と呼びます。

赤ちゃんの頃に脱臼を指摘されていなくても、「股関節の受け皿(臼蓋)が少し浅い」という状態で成長し、大人になってから痛みとして表面化することが非常に多いのが特徴です。


2. 痛みの原因は「受け皿の浅さ」にあります

股関節は、太ももの骨の頭(大腿骨頭)が、骨盤の受け皿(臼蓋)にはまる構造をしています。

形成不全の状態とは: この受け皿が通常よりも浅く、骨の頭を十分に覆えていない状態です。

なぜ痛みが出るのか: 支える面積が狭いため、体重のかかる圧力が狭い範囲に集中してしまいます。若い頃は周囲の筋肉や軟骨(関節唇)がカバーしていますが、長年の負担が蓄積されることで、軟骨がすり減ったり、関節唇が傷んだりして「痛み」が生じるようになります。


3. 放置するとどうなる?(変形性股関節症への進行)

日本における「変形性股関節症」の患者さんのうち、約80%はこの形成不全がベースにあると言われています。

初期は「運動後の違和感」や「長く歩いた時の痛み」程度ですが、進行すると靴下を履く動作や階段の上り下りが困難になります。早めに自分の股関節の状態を知り、適切な対策をとることが、将来の歩行機能を守る鍵となります。


4. 当院での診断と治療アプローチ

正確な画像診断(レントゲン・エコー)

当院では、レントゲンによる骨の形状評価に加え、必要に応じて超音波(エコー)検査を行います。エコーを用いることで、レントゲンでは映らない軟骨や関節唇の状態、炎症の有無をリアルタイムで確認し、痛みの原因を特定します。

リハビリテーション(保存療法)

骨の形状そのものを薬で変えることはできませんが、股関節を支える「筋力の強化」「体の使い方の改善」によって、負担を大幅に減らすことが可能です。

  • 筋力トレーニング: 股関節を安定させる中殿筋などを効率よく鍛えます。
  • 動作指導: 負担の少ない歩き方や、日常生活での動作(ADL)を理学療法士が丁寧に指導します。

痛みへの直接的なアプローチ

強い痛みがある場合は、エコーガイド下での精密な注射療法や、ハイドロリリース等を行い、まずは動ける状態を目指します。


5. 地域のかかりつけ医として

股関節の形状によっては、将来的に手術(骨切り術や人工股関節置換術)が望ましい選択肢となる場合もあります。

その際は、提携医療機関の専門医をスムーズにご紹介します。当院は「かかりつけ整形外科」として、手術前後のリハビリや経過観察も含め、長期にわたって患者さんの歩みをサポートします。


「最近、股関節の付け根が痛む」「家族に股関節が悪い人がいる」という方は、一度ご相談ください。早めのケアが、5年後、10年後の生活の質を大きく変えます。


この記事の監修・執筆者

豪徳寺整形外科クリニック院長 大野孝義 (日本整形外科学会 専門医)

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