股関節の「奥」が痛い——見落とされやすい「股関節唇損傷」の症状・診断・治療法

「股関節の奥がズキズキする」「しゃがむと鼠径部(そけいぶ)が痛い」「股関節でコキッと音がする」——そんな症状に長い間悩まされていませんか?

これらは股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)のサインかもしれません。レントゲンで「異常なし」と言われても痛みが続く場合、股関節唇の損傷が見落とされているケースがあります。


股関節唇とは

股関節は、骨盤の「受け皿(寛骨臼)」と大腿骨の「球(骨頭)」からなる球関節です。その受け皿のふちを取り囲む線維軟骨の輪が「股関節唇(関節唇)」です。

股関節唇の役割

  • 関節面を広げ、骨頭の安定性を高める
  • 衝撃を吸収するクッションの役割
  • 関節液を保持し、軟骨の栄養を維持する

原因と発生しやすい人

形態的な原因(最多)

FAI(大腿寛骨臼インピンジメント) と呼ばれる股関節の形態異常が最も多い原因です。

  • Cam型:大腿骨頭の形が丸くなく、関節唇に引っかかる
  • Pincer型:受け皿(寛骨臼)が深すぎて骨頭を包みすぎる
  • Mixed型:両方の混合

こんな人に多い

タイプ 特徴
スポーツ選手 サッカー・ゴルフ・格闘技・ダンス・バレエ
股関節を深く曲げる動作が多い人 和式トイレ・正座・農作業
臼蓋形成不全のある人 発育性股関節形成不全の既往

症状

典型的な症状

  • 鼠径部(足の付け根)の深部の痛み
  • しゃがんだとき・脚を組んだとき・長時間の歩行後に痛む
  • 股関節の可動域制限(深く曲げると痛みで制限される)
  • 股関節を動かすとクリック音(コキッ・ゴリッ)がする
  • 長時間の座位後に立ち上がると痛む

症状の進行

初期は「なんとなく股関節が重い・違和感」程度ですが、放置すると痛みが増強し、最終的に変形性股関節症に進行するリスクがあります。


診断

なぜ見落とされやすいのか

  • X線では映らない(関節唇は軟骨のため)
  • 通常のMRIでも描出が難しい
  • 「異常なし」と言われ続けることがある

正確な診断のために

  • 造影MRI(MRアルトログラフィー):関節内に造影剤を注入して撮影。精度が高い
  • 放射状MRI:骨形態と関節唇を同時に評価できる
  • FADIRテスト(身体診察):股関節を屈曲・内転・内旋させて痛みを誘発する

治療

保存療法(約70〜80%で疼痛改善)

まずは保存療法を3〜6ヶ月試みます。

  • 活動制限:痛みを誘発する動作・姿勢を避ける
  • 消炎鎮痛剤関節内ステロイド注射
  • 理学療法:股関節周囲筋(特に深層外旋筋)の強化・柔軟性改善
  • 日常生活動作の指導:和式トイレを洋式に変える、正座を避けるなど

手術療法(保存療法が無効な場合)

股関節鏡手術(関節鏡下股関節唇形成術)

  • 1cm程度の切開を3カ所作成する低侵襲手術
  • 損傷した関節唇の縫合・再建
  • 骨の形態異常(Cam変形・Pincer変形)の同時修正
  • 入院期間:2〜5日程度、本格復帰:3〜6ヶ月

こんな症状があれば一度受診を

  • 股関節・鼠径部の痛みが3ヶ月以上続いている
  • レントゲンで「異常なし」と言われたが痛みが取れない
  • しゃがむ動作で鼠径部に痛みやひっかかり感がある
  • スポーツ後に股関節が痛む・重い

股関節唇損傷は早期に診断・治療することで、変形性股関節症への進行を予防できます。「ただの筋肉痛だろう」と放置せず、お気軽にご来院ください。


豪徳寺整形外科クリニック


 

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