体外衝撃波治療(ESWT)とは?整形外科専門医が効果・適応・副作用を解説
体外衝撃波治療(ESWT)とは?|整形外科専門医がわかりやすく解説
「なかなか治らない足裏の痛み」「慢性的な肩やひじの痛み」でお悩みではありませんか?体外衝撃波治療(ESWT: Extracorporeal Shock Wave Therapy)は、体の外から衝撃波を照射することで、痛みの軽減と組織の修復を促す比較的新しい治療法です。もともとは泌尿器科の尿路結石破砕に用いられていた技術を、整形外科領域の疼痛治療に応用したもので、近年ではスポーツ医学を中心に世界的に広く普及しています。
この記事では、整形外科専門医の視点から、体外衝撃波治療の仕組み・適応疾患・治療の流れ・効果とエビデンス・副作用や注意点までを、患者さん向けにわかりやすく解説します。
体外衝撃波治療(ESWT)の仕組みと種類
衝撃波とは
衝撃波とは、音速を超えて伝わる圧力の波(音響パルス)のことです。もともとは1980年代に泌尿器科で腎臓結石を体外から破砕する治療(ESWL)に使われていた技術で、その後1990年代から欧州を中心に整形外科の疼痛治療への応用が始まりました。現在では世界各国で運動器疾患の治療に広く用いられています。
体外衝撃波治療では、この衝撃波エネルギーを皮膚の上から患部に向けて照射します。手術のようにメスを使わず、注射も行わないため、身体への負担が非常に少ないのが特長です。衝撃波が組織に到達すると、主に次の2つの作用が起こるとされています。
①痛みの神経への作用(除痛効果)
衝撃波が痛みを感じる自由神経終末に作用し、一時的に痛みの伝達を抑制します。これにより、慢性痛の悪循環を断ち切る効果が期待できます。
②組織の修復促進
衝撃波の刺激によって、照射部位周辺に血管新生(新しい血管ができること)や成長因子の産生が促されます。これにより、損傷した腱や靭帯などの組織修復が進むと報告されています。
収束型と拡散型の2種類
体外衝撃波には大きく分けて「収束型(集束型)」と「拡散型」の2種類があり、それぞれ特性が異なります。
収束型(集束型)は、エネルギーを一点に集中させて照射するタイプです。ピンポイントで深部の病変に到達できるため、石灰沈着性腱板炎や足底腱膜炎の付着部など、限局した病変への治療に適しています。超音波(エコー)で病変部を正確に確認しながら照射できるのも大きなメリットです。日本国内で保険適用が認められているのは、この収束型による難治性足底腱膜炎の治療です。
拡散型は、衝撃波が放射状に広がるタイプで、一度に広い範囲に照射できるのが特徴です。筋・筋膜の痛みやタイトネス(筋肉のこわばり)の改善、関節の拘縮(固まり)の改善にも有効とされています。収束型と拡散型は優劣の関係ではなく、症状や目的に応じて使い分けることが重要です。
体外衝撃波治療の適応疾患
国際衝撃波学会(ISMST)が発表したガイドラインでは、体外衝撃波治療の適応疾患が「標準適応」と「経験的適応」に分類されています。整形外科領域の主な適応疾患は以下のとおりです。
標準適応疾患(エビデンスが高い)
足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
足の裏、とくに踵(かかと)の付着部に痛みが生じる疾患で、ESWTの代表的な適応です。日本国内では、6か月以上の保存療法で改善しない「難治性足底腱膜炎」に対して保険適用が認められています。複数の臨床研究で、ESWT後に60〜80%の患者さんで痛みの有意な改善が報告されています。
石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)
肩の腱板にカルシウム(石灰)が沈着し、激しい痛みを引き起こす疾患です。収束型ESWTは、痛みの改善だけでなく石灰の吸収・消失を促進する効果があります。研究では、治療後1年でレントゲン上21%の症例で石灰が完全に消失し、36%で部分的に消失したと報告されています。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
ひじの外側に痛みが生じる、いわゆる「テニス肘」です。米国FDAでもESWT機器が慢性のテニス肘に対する治療として承認されています。6か月以上保存療法で改善しないケースに対して、ESWTが有効な選択肢となります。
アキレス腱付着部症
アキレス腱の踵骨(かかとの骨)への付着部に痛みを生じる疾患です。慢性化した場合に衝撃波治療が有効とされています。
経験的適応疾患(エビデンスは限定的だが臨床的に使用)
以下の疾患は、エビデンスが十分に確立されていないものの、臨床経験に基づいて治療が行われています。
- 膝蓋腱炎(ジャンパー膝):バスケットボールやバレーボールなどのジャンプ動作で多い膝前面の痛み
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘):ひじの内側に痛みを生じる疾患
- 腱板損傷(非石灰性):石灰を伴わない肩腱板の障害
- 鵞足炎(がそくえん):膝の内側の腱付着部の痛み
- シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎):すねの内側の痛みで、ランナーに多い
- 骨挫傷:骨の内部の微細な損傷
- 疲労骨折(遷延治癒):治りが遅い疲労骨折
- 早期の離断性骨軟骨炎:関節面の骨軟骨障害の初期
また、2025年の最新の国際的なデルファイ研究では、スポーツ医学分野におけるESWTの使用に関する専門家のコンセンサスが報告されており、変形性膝関節症に対する疼痛軽減効果についても新たなエビデンスが蓄積されつつあります。
体外衝撃波治療の流れ
実際の治療はどのように行われるのか、一般的な流れをご紹介します。
1. 診察・検査
まず整形外科医が問診と身体所見をとり、必要に応じてレントゲンやMRI、超音波検査を行います。衝撃波治療の適応があるかどうかを判断し、患者さんに治療内容を説明します。
2. 照射部位の確認
超音波(エコー)を用いて、痛みの原因となっている病変部を正確に特定します。収束型では特にこのターゲッティングが重要です。
3. 衝撃波の照射
患部にジェルを塗布し、衝撃波を照射します。1回の治療時間はおおむね10〜20分程度です。衝撃波のエネルギー量は低い出力から開始し、患者さんの反応を見ながら徐々に上げていきます。照射中にある程度の痛みを感じることがありますが、多くの場合は耐えられる範囲です。
4. 治療回数とスケジュール
一般的に、1〜2週間おきに合計3〜5回の照射を行います。疾患や症状の程度によって回数は異なりますが、足底腱膜炎や腱付着部炎では、週1回ペースで2〜4か月程度の治療で痛みが半減するケースが多いと報告されています。
5. 治療後の生活
治療後は特別な安静は不要で、日常生活はすぐに送れます。ただし、痛みが軽減しても組織の修復には時間がかかるため、治療後すぐに激しい運動やスポーツを再開するのは避けてください。組織修復の経過を見ながら、段階的に活動量を増やしていくことが大切です。
効果とエビデンス
体外衝撃波治療の平均的な有効率は60〜80%と報告されています。ただし、疾患の種類や重症度、症状の経過期間によって効果には個人差があります。
エビデンスレベルが高い疾患
足底腱膜炎と石灰沈着性腱板炎は、最もエビデンスが確立されている適応疾患です。足底腱膜炎に対するESWTは、2012年に日本国内で保険収載されたことからも、その有効性が認められています。石灰沈着性腱板炎においては、痛みの改善に加えて石灰の縮小・消失効果が科学的に実証されています。
テニス肘(外側上顆炎)についても、米国FDAがESWT機器を承認しており、国際的にも一定のエビデンスがあります。
最新の研究動向(2025〜2026年)
2025年に公表された国際的なデルファイ研究では、スポーツ医学における衝撃波治療の用語の統一や照射パラメータの標準化に向けた専門家の合意形成が進んでいます。また、変形性膝関節症に対する低出力衝撃波と低出力パルス超音波の併用療法が、痛みと炎症を有意に軽減したとの報告がNature誌に掲載されるなど、新たな適応拡大に向けた研究も活発です。
ACL(前十字靱帯)再建術後のリハビリテーションにおけるESWTの有効性を示すメタ分析も2025年に発表されており、術後回復の促進にESWTが寄与する可能性が示唆されています。
効果が出にくいケース
以下のような場合は、効果が限定的になる可能性があります。
- 症状の経過が非常に長い(数年以上の慢性痛)
- 局所のステロイド注射を繰り返した後の組織
- 安静やリハビリなどの基本的な保存療法を並行していない
- 全身的な基礎疾患の影響がある場合
ESWTは万能な治療法ではなく、あくまで保存療法の一環です。リハビリテーションやストレッチ、適切な運動療法と組み合わせることで効果が最大化されます。
副作用・注意点・禁忌
副作用(一般的に軽度)
体外衝撃波治療は非侵襲的な治療であり、重篤な副作用はほとんど報告されていません。起こりうる軽度の副作用としては以下のものがあります。
- 照射中〜照射後の一時的な痛み
- 照射部位の腫れ(腫脹)
- 皮下出血(点状出血)や内出血
- 皮膚の発赤
- 一時的な感覚異常やしびれ
いずれも軽度で、通常は数時間から数日で自然に改善します。
禁忌(治療ができないケース)
以下に該当する方は、原則として体外衝撃波治療を受けることができません。
- 妊娠中の方
- 照射部位に悪性腫瘍(がん)がある方
- 照射部位に重度の感染症がある方
- 血液凝固障害がある方、または抗凝固薬を服用中の方
- 成長期の骨端線(骨の成長線)付近への照射
- 照射部位に大きな血管や神経が近接している場合
治療を受ける際の注意点
特に重要な注意点として、ステロイド注射の既往がある方への衝撃波治療には慎重な判断が必要です。ステロイド注射後の組織は脆弱になっていることがあり、特にアキレス腱周囲では腱断裂のリスクがあると報告されています。治療前に必ず主治医に既往歴をお伝えください。
また、衝撃波治療は「除痛効果」と「組織修復効果」に時間差があります。痛みが和らいだからといってすぐに全力で運動を再開すると、まだ修復途中の組織を再び損傷するおそれがあります。医師の指示に従い、段階的にスポーツ復帰してください。
費用と保険適用について
日本国内で体外衝撃波治療が保険適用となっている疾患は、現在のところ「難治性足底腱膜炎」のみです(2012年に保険収載)。保険適用の条件は、6か月以上の十分な保存療法(投薬、装具、リハビリなど)を行っても改善が見られない場合に限られます。保険適用で治療を受ける場合は、施設基準を満たした医療機関であることが必要です。
それ以外の疾患(テニス肘、石灰沈着性腱板炎、アキレス腱炎、ジャンパー膝など)に対する衝撃波治療は、自由診療(自費)となります。費用は医療機関によって異なりますが、1回あたり5,000〜30,000円程度が一般的です。治療回数は通常3〜5回を要するため、トータルの費用も考慮した上でご検討ください。
当院での対応について
当院では、整形外科専門医が患者さん一人ひとりの症状を丁寧に診察し、体外衝撃波治療の適応を適切に判断いたします。保存療法(投薬・リハビリ・装具療法など)で十分な改善が得られない慢性的な腱や靭帯の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
治療にあたっては、超音波検査を用いた正確な診断のもと、患者さんの症状や生活スタイルに合わせた最適な治療プランをご提案いたします。衝撃波治療だけでなく、リハビリテーションや運動療法と組み合わせた総合的なアプローチで、痛みの根本改善を目指します。
なお、体外衝撃波治療は完全な除痛を保証するものではなく、効果や治癒までの期間には個人差があります。治療の適応や期待できる効果については、診察時に詳しくご説明いたしますので、まずはお気軽に受診ください。
まとめ
体外衝撃波治療(ESWT)は、慢性的な腱や靭帯の痛みに対する非侵襲的な治療法として、国内外で確かなエビデンスが蓄積されてきています。手術を避けたい方、注射やステロイドに頼りたくない方、保存療法で効果が十分でない方にとって、有効な選択肢の一つです。足底腱膜炎・石灰沈着性腱板炎・テニス肘をはじめ、さまざまな運動器疾患に対して幅広い適応が期待されています。
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