シンディング‐ラルセン‐ヨハンソン病(SLJ)とは? | 世田谷区 赤堤 

膝のお皿(膝蓋骨)の下端と、そこから伸びる膝蓋腱の付着部に起きる“成長期のオーバーユース障害”です。ジャンプやダッシュを繰り返す小学校高学年〜中学生に多く、バスケ・バレー・サッカー・陸上などでよく見られます。
似た病気にオスグッド病(脛骨粗面の痛み)がありますが、痛む場所が違うのがポイントです。


症状の特徴

  • 膝のお皿の下あたり(真ん中寄り)を押すと痛い
  • ジャンプ・ダッシュ・階段昇降・正座で痛い
  • 運動後に腫れ・熱っぽさを感じることがある
  • 朝よりも練習後に強くなることが多い

ここはオスグッドと違う!

  • SLJ:膝蓋骨の“下端”が痛い
  • オスグッド:すねの骨(脛骨粗面)が痛い

なぜ起こる?

成長期は骨端核(骨の成長部分)がまだ柔らかく、
大腿四頭筋の強い引っ張り+ジャンプ反復 → 膝蓋骨下端・膝蓋腱付着部に小さなダメージが蓄積 → 痛み・炎症が出ます。
急な練習量増加、柔軟性不足、筋力のアンバランスがリスクです。


診断方法(当院の流れ)

  1. 問診・触診:痛む場所、運動量、競技ポジションを確認
  2. 機能評価:大腿四頭筋・ハムストリング・股関節周囲の柔軟性と筋力、着地動作をチェック
  3. 超音波(エコー):膝蓋骨下端の腫れ、膝蓋腱付着部の変化を観察(被曝なし・即時
  4. X線:骨端の形の変化や他疾患の除外
  5. MRI:痛みが強い/長引く/他病変が疑わしい場合に限り実施

※骨折、離断性骨軟骨炎、膝蓋腱炎などとの鑑別を行います。



治療方針(基本は保存療法)

1)痛みのコントロール

  • 活動調整:ジャンプ・ダッシュ・深い屈伸を一時的に制限
  • アイシング:運動後10–15分
  • 鎮痛薬:必要時にアセトアミノフェン等を短期で(市販薬も可。長期連用は×)

2)リハビリ(当院リハで指導)

  • 柔軟性回復:大腿四頭筋・ハムストリング・腸腰筋・殿筋のストレッチ
  • 筋力強化(痛くない範囲から)
    • 大腿四頭筋
    • 股関節周囲:中殿筋・外旋筋群の強化
    • 体幹:プランク系
  • 動作改善:着地の膝内側崩れ(ニーイン)是正、前傾・股関節主動の使い方練習
  • 段階的復帰プログラム:痛みゼロでドリル → 走行 → 方向転換 → ジャンプ → 試合形式

3)物理療法・装具

  • テーピング膝蓋腱ベルトで負担分散(競技時のみ)
  • 必要に応じて物理療法(超音波・電気など)

4)手術?

  • ほとんど不要です。剥離が大きい・骨片が症状の原因で保存療法が無効なごく一部のみ検討。

競技復帰の目安

次をすべて満たしたら段階的に復帰します。

  • 安静時・日常生活・ジョグで痛みゼロ
  • 片脚スクワット10回で痛みなし&フォーム安定
  • 連続ジャンプ・方向転換テストで痛みなし
  • 着地動作でニーインが出ない
    ※焦って**“痛みを我慢しての練習”は悪化の近道**。コーチ・保護者と計画を共有しましょう。

予防のコツ

  • 練習量は少しずつ増やす(週あたり10%以内が目安)
  • 週2–3回の柔軟性(前もも・股関節)と股関節周りの筋力トレ
  • 成長期は**睡眠・栄養(たんぱく質/カルシウム/ビタミンD)**を十分に
  • シューズの摩耗チェック、必要ならインソール活用

よくある質問(Q&A)

Q. 体育や部活は完全休止が必要?
A. 痛みの強さにより調整します。痛みが出る動きだけ回避し、代替メニュー(体幹・上半身・バイク等)で体力を維持します。

Q. 片側だけ?両側にもなりますか?
A. 両側に出ることもあります。アライメントや柔軟性の左右差を整えると再発予防になります。

Q. 成長痛と何が違う?
A. 成長痛は夜間の両脚の漠然とした痛みが多いのに対し、SLJは運動で増悪し、膝蓋骨下端の一点がはっきり痛いのが特徴です。

Q. どれくらいで良くなりますか?
A. 軽症なら数週間、運動量が多い・柔軟性が硬い場合は1–3か月かかることがあります。計画的に進めれば後遺症なく復帰できます。


受診の目安

  • 2週間以上痛みが続く/階段や歩行でも痛い
  • 膝が腫れて熱い、夜も痛む
  • ジャンプ不能・びっこを引く
  • 良くならず競技復帰の計画を立てたい
    → 一度ご相談ください。当院ではその場でエコー評価が可能です。

豪徳寺整形外科クリニックでできること

  • 即日評価:問診・触診・レントゲン・エコー
  • 個別リハ処方:柔軟性・筋力・動作を見える化し、復帰ロードマップを作成
  • テーピング/膝蓋腱ベルト指導
  • コーチ・学校宛の部活調整文書の発行可

まとめ

  • SLJは成長期のオーバーユースによる膝蓋骨下端の痛み
  • 正しい鑑別(オスグッドとの違い)と活動調整+リハで改善
  • 段階的復帰とフォーム改善が再発予防の鍵
  • 悩んだら早めに専門医へ。当院が復帰までサポートします。

執筆:豪徳寺整形外科クリニック 院長 大野孝義(整形外科/スポーツ整形)
ご予約・お問い合わせ:03-5451-7878