スポーツ選手も悩む「足関節捻挫」—再発リスクを抑える治療とリハビリのポイント
足関節捻挫とは?
足関節捻挫は、スポーツ選手にとって最も頻繁に発生するケガの一つです。特に多いのが内返し捻挫で、足首を内側にひねることで外くるぶし周辺の靭帯を損傷します。軽度のものなら数日で治りますが、重度の捻挫になると回復まで数カ月を要し、再発リスクも高まります。実際に捻挫経験者の50〜70%は再発を経験すると言われています。
本記事では、足関節捻挫の重症度別の治療法とリハビリ期間、スポーツ復帰のプロセス、再発防止策について詳しく解説します。
捻挫の重症度と治療の流れ
足関節捻挫は、損傷の程度によって**軽度(Grade 1)、中等度(Grade 2)、重度(Grade 3)**に分類されます。
軽度(Grade 1)
状態: 靭帯の微細な損傷。軽い腫れや痛みはあるが、歩行は可能。
治療とリハビリ:
- 受傷直後はRICE処置(Rest安静・Ice冷却・Compression圧迫・Elevation挙上)を徹底
- 数日で腫れが引くため、痛みがなければ足首の可動域訓練を開始
- 2週間程度でスポーツ復帰可能
中等度(Grade 2)
状態: 靭帯の部分断裂。腫れや内出血が顕著で、関節の不安定性が見られる。
治療とリハビリ:
- 2〜3週間の固定(シーネ・ギプス・サポーター)を行い、靭帯の癒合を促す
- 徐々に荷重をかけ、可動域訓練・筋力強化に移行
- 3〜6週間で競技復帰可能
重度(Grade 3)
状態: 靭帯の完全断裂。著しい腫脹と関節の不安定性を伴い、自力歩行が困難。
治療とリハビリ:
- 3〜4週間のギプス固定または装具固定
- 松葉杖での免荷歩行を経て、可動域訓練や筋力トレーニングを進める
- 6〜12週間かけてスポーツ復帰
- 関節の不安定性が著しい場合は**手術(靭帯再建術)**を検討
スポーツ別のリハビリと復帰プログラム
スポーツによって足関節にかかる負担が異なるため、リハビリのポイントも異なります。
サッカー
- 急な方向転換が多いため、カッティング動作の安定性を強化
- 「8の字走行」「ジグザグ走」などのドリルを実施
- ボールを使ったトレーニングで、実戦復帰を目指す
バスケットボール
- 着地時の安定性強化が必須(ジャンプ後に他選手の足に乗るケースが多い)
- スクワットジャンプ、プライオメトリックトレーニングを導入
- ラダーを使ったフットワークドリルで俊敏性を向上
ランニング(陸上競技)
- 直線走行が中心だが、路面の凹凸やフォーム乱れが再発要因になる
- まずはウォーキング→ジョギング→ランニングの順に移行
- バランストレーニングを並行し、安定した走行フォームを確立
再発防止のためのリハビリトレーニング
足関節捻挫の再発を防ぐためには、筋力・バランス・柔軟性の向上が欠かせません。
1. 筋力トレーニング
- 腓骨筋群の強化(足首の外側を支える筋肉)
- セラバンドを使った外返し運動
- カーフレイズ(つま先立ち)
- 足底の筋力強化として**タオルギャザー(足指でタオルを引き寄せる運動)**を実施
2. バランス訓練(プロプリオセプショントレーニング)
- 片脚立ち(まずは安定した地面→次に不安定なクッションの上で)
- バランスボードを使った動的バランストレーニング
- 目を閉じた状態での片足立ち(神経の反応向上)
3. 敏捷性(アジリティ)向上
- ラダードリル(はしご状のステップトレーニング)
- シャトルラン(急停止・方向転換の反復練習)
- 連続ジャンプと片足着地のトレーニング
テーピング・装具の活用法
競技復帰後も、テーピングやサポーターを活用することで再発リスクを軽減できます。
- テーピング: 足関節の不安定性を補助し、内反動作を抑制
- サポーター: 競技中の負担を軽減し、再発予防に有効
- 慢性不安定症の場合: 長期間のサポーター使用やハイカットシューズの着用が推奨
まとめ:段階的なリハビリで安全なスポーツ復帰を
足関節捻挫は、適切な治療とリハビリを行えばほとんどの場合元の競技レベルに復帰可能です。しかし、焦ってリハビリを省略すると再発リスクが高まり、慢性不安定症へと進行する可能性もあります。
そのため、
- **急性期(RICE処置)**で炎症を抑える
- **亜急性期(可動域回復・筋力強化)**を丁寧に行う
- **回復期(競技動作の復帰)**を焦らず進める
というプロセスを踏み、主治医やトレーナーと相談しながら段階的に復帰することが重要です。
再発を防ぐためにも、競技復帰後もバランス・筋力強化トレーニングを継続し、足関節の安定性を維持しましょう!