その他の肩周りの痛みについて
石灰性腱板炎
特にきっかけなく肩にものすごい痛みが出ます。じっとしていても痛いことがあります。
肩には腱板と呼ばれる腱組織があります。
原因は不明なのですがこの腱板に石灰(リン酸カルシウム)が沈着して、炎症によって強い痛みが生じる病気が石灰性腱板炎です。肩に熱を帯びたり、腕を動かさなくても痛く、また夜眠れないほどの痛みも起こります。レントゲンで肩の腱板に石灰化があれば診断がつきます。
自然経過でも1〜2週で石灰が消えることもありますが、早く痛みを和らげるため飲み薬(非ステロイド性抗炎症薬)、関節注射(ステロイド)、石灰吸引(注射針を刺して石灰を抜く)などの治療を行います。エコー下で石灰化しているところを直接確認して注射をすると著効することがあります。注射を受ける際はぜひエコーを使用しているクリニックに行かれて治療を受けるのがといいと思います。
上腕骨近位部骨折
肩関節周辺は骨折がよく起こる部位です。中高年の方に多い上腕骨近位部骨折(肩に近い所の骨折)は、転倒して肩から地面に落ちてしまったり、手をついたりするときに起こります。治療法を誤ると後に不自由(関節可動域の制限、痛みの残存)さが残ることがあり、最初の判断が重要です。X線写真とCTで手術が必要かどうかを判断します。
上腕骨近位部骨折の約8割は保存治療(手術をしない治療)が可能です。骨折部が大きくずれている場合には、髄内釘(金属でできた棒とネジを骨の中に挿入して固定する)、プレート(金属でできた板とネジ)などで固定する手術を行います。
脱臼
肩関節は人体で最も脱臼しやすい関節です。通常は事故やスポーツなどで強い力を受けたときに外れます。そのまま放置しておくと脱臼整復が非常に困難になりますので病院で脱臼を元に戻す(整復する)ことが必要です。3週間放置してしまうと陳急性脱臼骨折となり、手術加療を要します。
10〜20歳代の若い人では脱臼が再発しやすく(反復性脱臼)、MRIで調べると関節唇(脱臼を防ぐためのストッパー組織)が損傷されていることが分かります。
脱臼の不安なく仕事やスポーツを続けたい(ラグビーなどのコンタクトスポーツ)方には、内視鏡手術で関節唇を再建します(関節鏡下肩関節唇形成術)。
変形性肩関節症
関節軟骨が磨耗し、肩の痛みや動きの制限を生じる病気です。主として加齢により自然に発生する一次性関節症と、他の病気によって軟骨が障害される二次性関節症とがあります。診断はレントゲンで行い、肩関節軟骨の摩耗や、骨棘の形成、骨嚢胞などがあれば診断に至ります。
痛みや動きの制限に対しては、飲み薬(ロキソニン、アセトアミノフェン)、自主リハビリ(穏やかなストレッチ運動や筋収縮訓練)などで治療します。痛みが強い場合には関節注射(ステロイド、ヒアルロン酸)を行うことがあります。かなり変形のつよい関節症で、生活に困るような痛みや動きの制限が続く場合には、人工肩関節置換術が標準的な治療です。
リバース型人工肩関節について
通常の人工肩関節は腱板の働きで腕を動かすようになっていますので、腱板が正常な変形性肩関節症に適しています。リバース型人工肩関節は腱板がなくても三角筋を使用して肩関節が動く構造を持っており、腱板断裂関節症の方に適しています。原則65歳以上で、リバース型人工肩関節の長所短所をご理解いただける方に手術を行なっています。