膝関節症(変形性膝関節症)診療の新しい流れとエコー(超音波検査)の重要性
豪徳寺整形外科クリニック 院長 解説
変形性膝関節症(OA)とは?
膝関節症(OA)は、中高年の方に多く見られる膝の病気です。関節の軟骨がすり減り、膝の痛みや動かしにくさを引き起こします。
これまでは、レントゲンで「骨がすり減っているかどうか」を確認し、進行してしまった場合は人工関節置換術(TKA)といった手術が中心でした。
しかし近年、**「早期のOAを見つけて治療すること」**が重要視されるようになってきました。これは「治療のタイミングを逃さないことで進行を防ぐ」考え方で、医学的に大きなパラダイムシフト(診療の考え方の転換)が起きています。
これからは「早期発見」と「エコー診療」の時代
レントゲンの限界
レントゲンでは、骨が大きく変形してからでないと診断が難しい場合があります。つまり、**「手遅れになってから分かる」**という弱点がありました。
エコー(超音波検査)の強み
当院では、エコーを積極的に活用しています。
エコーはレントゲンでは分からない「早期の変化」を見つけられるのが特徴です。例えば:
- 骨棘(こつきょく:骨のトゲのような変化)
- 半月板の損傷や逸脱
- 軟骨のすり減りや線維化
- 膝に水がたまっているかどうか
- 炎症による血流の増加
こうした情報をリアルタイムで確認できるため、「どこに原因があるのか」を的確に診断できるのです。
ヒアルロン酸注射とエコーの組み合わせ
ヒアルロン酸注射は膝OAの代表的な治療です。
軟骨を守る・痛みをやわらげる・関節液を整える効果があり、特に早期OAで効果が出やすいことが分かっています。
ただし大切なのは、確実に関節の中に注射すること。
従来の「手探りで行う注射(ブラインド法)」では、正確に関節に入っていないケースがありました。
エコーを使えば、針先の位置や薬液の広がりを確認しながら注射できるため、成功率はほぼ100%に近づきます。
「その場しのぎ」ではなく、正確で安心できる治療が可能になります。
関節外の原因も見逃さない
膝の痛みは、必ずしも関節そのものから来ているとは限りません。
例えば:
- MCL(内側側副靭帯)の滑液包炎
- 半膜様筋付着部の炎症
- 膝周囲の神経痛
これらは関節内注射では改善しませんが、エコーで場所を特定して正確に注射することで、痛みの改善が期待できます。
手術も「テーラーメイド」の時代へ
昔は「進行したら全例TKA(人工膝関節)」が基本でした。
しかし現在は、患者さんの生活スタイルや年齢に合わせた多様な選択肢があります。
- 関節鏡手術:限られた症例で有効
- 骨切り術(AKO):若年層やスポーツ愛好家に適応
- 人工膝関節単顆置換術(UKA):TKAよりも回復が早く、生活に合わせやすい
- 人工膝関節全置換術(TKA):幅広い症例に対応可能
「一人ひとりに合った治療を提案する」ことがこれからの整形外科診療に求められています。
当院からのメッセージ
- 膝の痛みは「年齢のせい」だけではありません。
- 早期に正しく診断し、適切に介入することで、進行を防ぐことができます。
- エコーは「見えないものを見える化」する大切なツールです。
- 保存療法から手術まで、患者さんに合わせたオーダーメイド治療を提案します。
膝の違和感や痛みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。