はじめに

近年、健康への関心が高まるなかで、一般的な保険診療では対応しづらい高度できめ細やかな医療を求める患者様が増えてきています。当クリニックもこうした声に応えるべく、再生医療など先進的な技術を積極的に採り入れています。
そうした取り組みの一環として、当クリニックでは再生医療の一種である “PRP療法” を行っています。PRP療法は、患者様自身の血小板を利用し、自己治癒力を高める画期的な治療法です。
最近ではメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手や田中将大選手など一流アスリートが、肘を故障した際の治療にPRP療法を選択したことで日本でも注目されるようになってきました。
再生医療の可能性が広がるなかで、その安全性や効果の検証も進んでいます。私たちは、患者様の健康と安全を最優先に考え、最新の医療技術を提供することで、皆さまの健康で活動的な人生をサポートしていきます。

目次

①PRP療法とは? PRP療法の特徴
②適応疾患
③当クリニックのPRP療法と3つの特長
④治療の流れ
⑤費用について
⑥副作用について
⑦よくある質問

①PRP療法とは? PRP療法の特徴

PRPとは?
PRP(platelet-rich plasma:日本語では多血小板血漿)とは、血液中の成分である “血小板” の機能を利用した再生医療の一つです。
血小板には組織を修復する “成長因子” が豊富に含まれており、患者様自身の血液を使って自己治癒力を高めることで、手術せずに痛みを改善することができます。
(ただし、軟骨などが元通り再建されるわけではありません。)

PRP療法の特徴
①日帰り治療:採血を行った当日に治療を受けることができます。入院の必要はありません。
②手術回避:手術を受ける必要がないため、リスクや入院の必要がありません。
③早期復帰:短時間で治療を受けられるため、早い段階で日常生活やスポーツに復帰できます。
④効果が長続き:一般的なステロイド注射と比べて、効果が長期間持続します。
⑤副作用のリスクが少ない:患者様の血液を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが低い治療法です。
⑥ドーピング対象外:WADA(世界アンチドーピング機構)によってドーピング対象外とされているため、アスリートも安心して治療を受けることができます。

PRP療法は、患者様の血液を利用して痛みを改善する革新的な治療法です。変形性ひざ関節症などの関節疾患や、筋肉や腱の痛みに対して効果が期待されます。
手術を避けたい方やスポーツ選手など、様々な患者様に選ばれており、今後ますます注目される治療法と言えるでしょう。

②適応疾患

PRPは、さまざまな組織の治癒を促進するために使われています。特に、関節や靭帯、筋肉、骨などの損傷に対して効果が期待されています。

代表的な適応疾患

PRP療法が有効とされる疾患には以下のようなものがあります。

  • 変形性関節症(膝や股関節、足、指など)
  • テニス肘やゴルフ肘(上腕骨の外側や内側の炎症)
  • 野球肘(肘の内側の靱帯損傷)
  • アキレス腱炎
  • ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
  • 足底腱膜炎
  • 手根管症候群
  • 捻挫や靭帯損傷、半月板損傷、肉離れ、腱板炎、疲労骨折 など

PRP療法で組織の再生を促すことで、痛みの軽減や機能の改善が期待されます。

こんな患者様に選ばれています

①入院や手術を避けたい方
②年齢や持病の関係で手術が難しい方
③ステロイド注射や装具などの一般的な保険治療が効果的でなかった方
④他の治療法(例えばヒアルロン酸注射など)が効果的でなかった方
⑤早くスポーツ活動に復帰したい方

PRP療法は多くの疾患や症状に対して有効な治療法であり、手術を避けたい患者様や、それまでの治療法では効果を実感できなかった患者様にとって重要な選択肢となっています。身近な症状やスポーツでのケガなど、様々な場面でPRP療法が活用されています。

③当クリニックのPRP療法と3つの特長

当クリニックでは、個々の患者様や治療目的によって2種類の手法でPRP療法を提供しています。
詳しくは診察時にご案内しますが、以下ではそれぞれの方法の特徴を簡単にご紹介します。

①ACP-PRP療法
ACP-PRP療法では、国内で承認された特別な医療機器を使い、わずかな血液(15ml)からPRPを作ります。これは国内外で多くの検査を受け、安全性や効果が確認された方法です。待ち時間も短く、比較的リーズナブルな価格で提供されるのが特長です。

②PRP-FD(フリーズドライ)療法
PRP-FD療法では、PRPに含まれる成長因子をより濃縮し、長期保存も可能な特殊な加工が施されます。治療効果をより長期間にわたって持続させることが期待できますが、治療までに2週間以上かかる点が異なります。

当クリニックの3つの特長

①エコーを使った確実な注射
レントゲンやMRIで見つけにくい小さな病変部を、超音波診断装置(エコー)を使って正確に見つけ、PRPを注射します。エコーを使用した治療はそうでない治療より、正確で、治療効果が高いといわれています。

②リハビリテーションの提供
PRP療法はやりっぱなしではなく、治療後のリハビリテーションが重要です。当クリニックは充実したリハビリルームを備えており、経験豊富なスタッフが患者様の目標達成に向けてサポートします。痛みの解消や運動能力の向上に向けて、徹底的に取り組んでいます。

③体外衝撃波治療との併用 ※オプション
最近の研究で、PRP療法と体外衝撃波治療(自費診療)の併用が効果的であることが示されています。当院では、この2つの治療を組み合わせて、より効果的な治療を提供しています。これにより、痛みの緩和や血流改善などにより大きな効果が期待できます。

治療期間と回数
標準的には1~3回の治療で、3~6ヶ月程度の治療期間を必要とします。
治療後には、症状や画像検査などにより、治療の効果を確認します。

④治療の流れ

1.カウンセリング&診察(保険診療)

PRP治療が最適かどうか検討いたします。

  1. カウンセリング(問診)
  2. 診察
  3. 画像検査
  4. 採血検査
  5. 総合判断

※治療経過や症状によっては、PRP療法よりも先に検討した方が良い治療方法をご案内する場合があります。

2.PRP予約とIC・同意書の説明

PRP治療について説明と同意後、予約を行います。

6. PRP治療の説明と同意
7. 予約
8. 処方

    ※ステロイドやNSAIDs(ロキソニンやボルタレン)を使用している方は注射実施前、Wash Out期間(1~2週間)が必要(吸引薬や外用も含む)

    PRP療法当日の流れ(保険適応外自由診療)

    1. 受付を済ませ、同意書を確認後、採血を行います。
    2. 採血から治療まで約15~30分程度で完了します。
    3. 採血後にACPキットを遠心分離機にセットし5分間遠心をかけます。
    4. 1キットで15ml採血し、3-6ml程度のPRPを作成可能です。
    5. 遠心終了後に、キットを取り出し、PRPを採取します。
    6. エコーガイド下に患部を観察しながら、局所麻酔を希望に応じて実施し、その後、正確に患部へPRPを注入します。
    7. 損傷した腱や靭帯のような緻密結合組織の場合、圧をかけて注入するため激痛を伴うことがあります。
    8. 投与後、弾性包帯固定を行い、PRPが患部に留まり損傷組織との反応させるために、指定の肢位にて10分間安静にして頂きます。
    9. その後、患部に問題が無ければ、帰宅可能です。
    10. <投与量>
      PRPの効果は、海外の文献によると、投与量に依存する(dose-dependent)ことが報告されておりますが、別の文献では6倍以上の濃度で、効果は頭打ち(増加しない)となることが分かっております。
      そのため、当クリニックでは、患者様の病態にもよりますが、1キットよりも2キット同時投与をお勧めいたします。
    11. <投与回数・間隔>
      国内海外の文献によると、関節内疾患に対しては、3~4週間毎に3回PRP療法を1クールとして行っている文献が多くあります。
      当クリニックでも同様のスケジュールで行います。
      必要に応じて追加投与も検討します。
    12. <体外衝撃波治療との併用>
      近年、PRPと体外衝撃波治療を併用した治療がより効果が高いことが報告されています。
      当クリニックでも体外衝撃波治療機器を導入しておりますので、併用可能です。
      体外衝撃波治療により得られる効果としては、疼痛を誘発している神経終末部の変性・破壊や疼痛伝達物質の減少、血流の改善が考えられており、PRPの効果をより発揮できる環境となります。
      よって、採血後、PRP投与前の待ち時間に体外衝撃波治療を実施し、PRP完成後に患部にPRPを投与するPRP+体外衝撃波併用療法をお勧めいたします。

    ※再生医療の治療は全て当日中に完了

    治療後の注意点

    • PRP投与後30分もすると、成長因子の放出が始まるため、早い方で30分後より患部に疼痛などの症状が出現します。
    • 注射直後は疼痛のために、稀に歩行困難な方もいらっしゃいますが、通常アイシングなどを行い10~15分程度休憩すれば、徒歩で帰宅可能です。
    • 投与前後の疼痛に関しては、PRPによる治癒過程をブロックしてしまうため、消炎鎮痛剤に使用できるものと使用できないものがございますので、担当医に確認ください。
    • 日常生活動作は注射当日から可能です。
    • 治療後3~4日間は、細胞の活発な代謝が起こる炎症期のため、痛みや腫れを生じることがありますが、徐々に軽減していきます。
    • リハビリについては、翌日から疼痛に応じて可能です。ただ、患部に直接刺激が加わる様な鍼や体外衝撃波療法は、PRP後1週間経過するまでは控えてください。
    • 詳細は診察時に担当医にお問合せください。
    • 1~3回のPRP療法を終了後、約3か月後、6ヶ月後に、症状や日常生活レベルの改善、レントゲン写真や超音波画像やMRI検査所見がどのように変化したかを評価します。

    ⑤費用について

    ① ACP-PRP1回につき55,000円(税込) ※6月から開始予定
    ② PRP-FD1回につき165,000円(税込)

    ※採血後の感染症検査(HIV・HBV・HCV・梅毒・HTLV‐1)で陽性反応が確認された場合は、PRP治療を受けることができません(その場合、血液検査料と手技料として16,500円(税込)をご負担いただきます)。

    ⑥副作用について

    PRP治療では、患者様自身の血液から治療に使う成分を取り出します。このため、他人の組織を使う移植手術などで必要な免疫抑制剤による副作用の心配はありません。しかし、採血のために注射針を使う必要があります。

    採血量は 15mL程度(必要に応じて最大でも150mL程度)ですので、一般的な献血(200mL~400mL)に比べても少量であり、比較的安全性の高い処置です。ただしごく稀に、採血時のリスクとして以下のような偶発症や合併症が起こることがあります。

    • 痛み: 採血時に痛みを感じることがありますが、ほとんどの場合はすぐに治まります。
    • 気分不良やめまい: 稀に、気分が悪くなったり、めまいや吐き気を感じることがあります。
    • 皮下出血: 注射の場所に軽い出血が起こることがあります。
    • 神経損傷: 注射針が神経に触れることで、痛みやしびれ、筋力低下などの症状が起こる可能性があります。

    一方でPRP注入時のリスクとして、以下のような偶発症や合併症が考えられます。

    • 感染: PRPの調製過程で細菌などの混入を防止するための対策が取られていますが、完全な混入防止は難しいため、感染のリスクがあります。感染が疑われる場合は、適切な処置が行われます。
    • 痛み: PRP注入後は、注射部位に痛みを感じることがあります。しかし、痛みは徐々に和らいでいきます。
    • 腫れや内出血: 注射後、数日間は注入部位が腫れたり、内出血(紫色になること)が起こることがありますが、自然に治まります。

    これらのリスクや副作用は比較的稀ですが、万が一の場合でも適切な処置が行われますので、安心して治療を受けることができます。

    ⑦よくある質問

    1. 痛みの改善効果はどのくらい続きますか?
      変形性膝関節症の治療では、平均して1年間ほど痛みの改善が持続することが報告されています。(ただし、個人によって効果の持続期間は異なりますので、一概には言えません。)
    2. 効果はいつから現れますか?
      通常、治療後1〜2週間程度で効果が現れ始め、4〜6週間程度で効果を実感することが多いです。ただし、個人差や症状の重さによって異なる場合があります。
    3. 治療を受けられない人はいますか?
      一部の血液疾患やガン治療中の方は、PRP治療を受けることができません。また、採血後の感染症検査(HIV・HBV・HCV・梅毒・HTLV‐1)で陽性反応が確認された場合も、PRP治療を受けることができません(その場合も血液検査費用はご負担いただきます)。
      なお、関節の変形が重度の場合は、手術が適している場合もあります。年齢に関係なく、治療が適しているかどうかは患者ごとに判断されます。
    4. 回数制限はありますか?
      複数回の治療は問題ありません。治療の頻度や回数は調整可能です。医師と相談のうえ、最適な治療計画を立てていきます。
    5. 効果を持続させるためにできることはありますか?
      痛みがおさまった後でも、運動療法を併用することで効果を持続させることができます。また、肥満気味の方は体重を減らすことで関節への負担を減らし、効果を高めることができます。