半月板損傷
半月板とは、大腿骨と脛骨の間にある軟骨組織のことです。ひざの内側と外側にそれぞれ存在し、関節に加わる負荷を分散させ、膝関節を保護するクッション的な役割があります。また関節安定化、関節不適合の補形、渇潤の補助などの役割もあります。半月板損傷は、ひざに強い衝撃が加わることで、半月板に断裂が生じた状態のことで、運動時などひざに痛みが生じるようになります。一度損傷が起きると繊維軟骨であり血流に乏しく、自己治癒能は低いといわれています。単独損傷の場合、内側断裂73%、外側断裂19% 、両側8%と報告されています。
主な症状
- 歩行障害
- ひざが腫れたり熱感を帯びる
- ひざを動かすときにひっかかるような感覚がある
- ひざの曲げ伸ばし時に痛みがあり困難
- ひざを動かすときに重く感じる
- 階段昇降ときに痛みを感じる
- 関節内に半月板がひっかかりひざが突然伸びなくなる
- 歩き始めや歩いている最中に痛みを感じる
- 運動すると痛む、休むと軽快
- しばらく休んで運動再開すると同じ症状
考えられる原因
スポーツでの外傷や加齢によるもの
半月板損傷は、スポーツで、体重がかかった状態でひざをひねったり、強い衝撃が加わったりすることが原因となることが多いです。また、半月板は加齢によって劣化し、傷つきやすくなります。そのため、高齢者の場合はささいなケガや、日常生活の動作のなかでも半月板が損傷することがあります。また生まれつき傷がつきやすい半月板をもっているかたもいて(円板状半月板)、若い方でも軽微な外傷をきっかけに受傷することがあります。半月板損傷は長期間放置してしまうと、ひざに負担がかかることで膝軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する可能性もあるため、早期の段階で治療し、機能を回復させることが重要です。
診断
整形外科でひざの症状を診察し、半月板損傷が疑われる場合はレントゲン、MRI検査を行います。レントゲンでは変形性膝関節症の有無をチェックします。半月板はレントゲンには映らないため、診断にはMRI検査が必須です。
半月板が損傷していると、三角形の半月板の中に白い線(断裂)が認められます。しかし外側半月板損傷のMRIに対する診断率は低いので所見、症状(引っかかりやクリック)で判断することもあります。
治療法
保存療法
軽症の場合は、まず保存療法を行います。保存療法には、薬物療法(内服、関節内注射)や物理療法、装具療法(lateral wedgeのインソール)、運動療法(大腿四頭筋などのストレッチ、筋トレ)などがあり、これらを組み合わせて行います。関節内に水が溜まっている場合は、注射で水を抜くことで、症状が緩和されます。しかし水はまたすぐ溜まってしまうこともあります。一般的に、保存療法で効果が得られない場合は、手術療法が検討されます。
手術療法
ひざが動かなくなるロッキング症状がある場合や、保存療法で効果が得られなかった場合は手術療法が検討されます。手術は、半月板の損傷した部分を切り取る半月板切除術と、損傷した部分を縫い合わせる半月板縫合術の2種類があります。最近の考え方では半月板はなるべく温存した方がいいと考えれられているため、縫合できる半月板は縫合します。縫合が困難な症例や早期のスポーツ復帰を迫られる症例に限って半月部分切除が選択されます。
どちらも手術後はリハビリが必要です。スポーツへ復帰できるタイミングは、半月板切除術で約3ヵ月、半月板縫合術で約6ヵ月程度とされています。
手術のデメリット
長期経過において、半月板切除後の変形性膝関節症変化は起こりやすいといわれています。短期経過においては内側半月板切除後の骨壊死や外側半月板切除後の急速軟骨破壊などの合併症が報告されています。
半月板縫合術は20ー30%の再断裂率が報告されています。再手術率は切除率より5-10倍高いと報告されています。しかし半月板はなるべく温存することが望ましいとされているので最近の手術の傾向としてはなるべく半月板を保存すべく縫うように努めています。半月板を縫った場合はしばらく荷重制限や関節可動域の制限をすることになるため、リハビリに要する時間がながく、そのため入院も長期化することがあります。